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今月のお題  『リフォーム』      

昨今、新聞折り込み、雑誌、TVでも家のリフォーム特集おおはやり。あんな風に変わるのならやってみたいと、みなさんも一度は自宅のリフォーム考えたことあるのでは?今回はメンバーのどんなリフォーム術・リフォーム論が展開されるでしょうか。お楽しみください。

 


森 たかこ

『サイズ間違い』

結婚して初めて買ったマンションは中古だった。入居前にリビングをフローリングにし、台所・風呂・洗面所・トイレと結構しっかりリフォームした。
台所に関しては予算などを考えた上で、私が「こんな風にしてほしい」との要望を出し、夫がそれに従って流し台などとその上の棚などの設計をした。が、実際にできあがったものを見て、「はて?」と思うことがあった。収納棚の下に調味料入れがある。おかしい、こんなものは頼んだ記憶がないのだが。
後で判明したのだが、夫は棚の下に取り付ける網などのサイズを間違えていて、20pほど隙間が空いてしまったらしい。それでその隙間にあうものを急きょ取り付けることにしたとのこと。うーん。
夫は設計のプロではないので仕方がないと言えば仕方がないのだが、プロなら「次から仕事来ないよ」という状態だ。「こんな所に調味料入れなんて不細工!」と文句を言った私であるが、実際に使ってみると、片手で砂糖と塩がさっと出せて非常に便利だった。
たまたまうまくいったが、身内に設計を頼む場合は、いくら信用できる人であっても、依頼者は必ずチェックしましょう。(こんなことは我が家だけかもしれないけど)


宇都宮 雅子

『リフォームブームに思う』

日本の住宅の平均寿命は約26年というデータがある。石づくりの住宅に住む欧米人は昔からリフォームを重ねてひとつの建物に長く住み続けてきたが、日本人は建てては壊し、建てては壊しの繰り返しだ。
ところが今は、長引く不況と先行き不安で家を新築する余裕がない。しかたがないから、持ち家のある人は今ある家をリフォームで新築同然にしたいと考える。リフォームの内容は、それぞれの家庭によって全く違ってくる。家族の事情、家族の好み、家族の夢・・・そんな有象無象が混沌とミックスされた状態で、リフォームプランナーの前に突きつけられる。夢が広がれば広がるほど予算も高くつき、結果的に新築予算を上回るケースだってあるだろうーー
現在のリフォームブームからこうした情報が聞こえてきた。26年しかもたない建物をリフォームで寿命を延ばすつもりなら、本当に気をつけなければいけないのは、建物の基礎部分。つい華やかなインテリアや外観に目を奪われがちだが、リフォームを真剣に考えるなら、建築基礎の知識と経験が豊かな業者を選ぶべきだ。
あふれる情報と見逃しがちな真実。いろんな意味でリフォームは確かに人生訓に満ちている。


福留 順子

『リフォーム』

リフォームといえば家や部屋のリフォームがまず頭に浮かぶが、服のリフォーム屋さんも、結構見かける。会社組織になっていて、全国組織のリフォーム屋さんもある。そこで働いている人は、もちろんパートの近所の人もいるが、中国の若い女性もいたので驚いたことがある。聞くと、技術を習得のために見習いに来ているのだそうだ。そのうち服のリフォームは、採寸等は日本で、仕事は中国でということになるのかもしれない。ひょっとしたら、もうそうなっているのだろうか?

生前の母は、既製服ではまかないきれない体型をしていた。体重はやせているという部類に入るのに、ウエストは肥満体なみという体型。パンツを買うと、たいていウエストが入らない。おまけに年齢を重ねるにつれて、無理をすることを嫌うようになるので、キュッとウエストを締め付けるなんて、金輪際したくないという。

母は、体型に合わせて服を自分で直していたけれど、そのうち針を持つことが大変になってきて、はけないままのパンツが箪笥をにぎわすようになってきた。買うよりリフォームに出すほうが経済的なので、リフォーム屋さんに連れて行った。ウエストを締め付けられることを嫌う母は、もっと大きくしてもっと!と注文をつける。

結局出来上がってみると、ウエストがぶかぶかではけたものではなかったようだ。それを私に知られるのがいやでずっと、同じものをはいていた。理由は「これがはきやすい」のだそうだ。自分でリフォームしたパンツである。ゴムが顔を除かせているかと思えば、輪ゴムでとめているときもあった。自分の好みにあったように、自分なりで操作する。自分の使い勝手が一番のパンツだった。

母を見ていて気づいたことは結局リフォームとは、自分サイズに自在になるようにすること。身の回りをすべてこの精神でリフォームできれば、これほど楽なことはない。家も服も・・・ついでに生き方も。

まだまだ既製品に自分を合わせている私。いつか自分に合わせてリフォームしてみたいと思う。が、その前に、しっかり核となる「自分」を作らなければいけないなあ。


藤原 佳枝

『不景気の効用』

家や洋服のリフォーム(reform)として一般的に使われる「リフォーム」って和製英語らしい。5歳の姪が「おばあちゃんち、リフォームすればいいのに・・・」と言うぐらい、今や誰でも意味を知っている言葉となっている。そういえば、「リハウス(rehouse)」なんて言葉もあった。よりよい環境に家を住み替えようという発想で、まさにバブル期になじんだものだ。若き日の宮沢りえの引っ越しCMは記憶に新しい。
しかしバブルははじけ世は不景気。そんなに簡単に住み替えなどできなくなってしまった。そこで、それほどお金をかけずに家を住みやすいように手直ししていくリフォームが脚光を浴びている。台所、浴室、トイレ、リビングがリフォーム後に美しく変身した姿を広告などで見ると、うちもやってみようかという気になる。日本人は新築好きで家の耐用年数が諸外国に比べるとものすごく短い。中古住宅となると一気に価値が下がってしまうが、実際にはそれはおかしな話だ。少しづつ手を入れながら、自分の気に入った家に作り上げていくスタイルは環境にも優しいし、モノを大事にすることにもつながる。この不景気だからこそ、本当に大事なモノは何かを考えるチャンスになるかも。ブームのリフォームは考え物だが、定着していけば新たな価値観を与えてくれそうだ。


伊藤 さおり

『美しく再生されるものたち』

古くなった物に手を加えて形を蘇らせること、それは新しい中にもどこかしら生活臭の断片を残すことを愛しむ行為である。今は住宅のリフォームが大流行りだが、洋服についてもしかり。なかでも着物からスカートやブラウスへのリフォームは専門の教室があるほどの人気だ。
いうまでもなく、着物が日常着だったころには何度も洗い張りしては大人から子どもへ、そして赤ちゃんのオシメへ、果てはボロ雑巾になるまでとことん使いたおしたという。そうはいかないまでも、私が子ども時代に着ていた服のほとんどは母の手作りであり、母が自分の衣類をリフォームしたものも少なくなかった。世界でたったひとつのオリジナルな服であるそれらの数着は今でも手元に残っており、再びの出番を待っている。そう、私が袖を通した同じものを、いつか自分の子どもに着せてあげたい。そんな気持ちで何度か出したものの、わずか3歳のオトコながら思うところがあったのか、ことごとく「女の子みたいなのイヤ!」と拒否されたのだった。
一方の母はといえば、娘という対象を孫へと替え、30年前と同じようにせっせと製作にいそしんでいる。セーターの両袖が長ズボンになるというような簡単リフォーム技は結構見事であるのだが、ときに両袖と身ごろが便座カバーに変身していたりした時には、ちょっとビックリしてしまう。