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号のお題  『”選挙の年”に思う』 

今年は、春の統一地方選挙と夏の参議院選挙が行われる、12年に一度の”選挙の年”です。結果がわれわれ住民の生活に直結する都道府県知事選と政令市町選、そして安倍政権の行方が気になる参議院選挙。財政や教育、医療など、山積みにある問題を考えると、無関心ではいられませんよね。PIAZZAのメンバーは選挙の年に何を思い、何を考えているのでしょう。


宇都宮 雅子

『イベント化する選挙』

高校を卒業して大学に入学するまでの春休み、生まれて初めて経験したアルバイトが選挙事務所だった。
「先生」や家族だけでなく、つねに支援者たちが滞在し、近所の奥さんたちによる炊き出し部隊も登場した選挙事務所は、いつも人が集まり、にぎやかな場所だった。まだ選挙権もない年齢だったが、ビラを配ったり道行く人に頭を下げたり、それなりに人間模様も見ることができて、初めてのバイトにしてはいろいろな経験ができた。
しかし、私自身は政治になんの興味もないノンポリ学生となり、ン10年たった今でも立派な(?)無党派層だ。
東京では都知事選がらみのニュースが多く、選挙カーも走りはじめている。統一選の場合、テレビ局がどこも特別番組を組むようになり、選挙もすっかりイベント化してしまった(水泳や陸上の世界選手権がイベント化され、無理やり盛り上げられているのと似た状況にすら見える)。
テレビの選挙事務所中継に映る「支援者のみなさん」が、ひとりひとりどんな思いで自分たちの「先生」の選挙を応援しているのか。昔の思い出とともに、つい想像がふくらんでしまう。


伊藤 さおり

『子どもと楽しむ選挙』

このコラムを書いている今は、ちょうど県知事と県議員の選挙戦がおこなわれているところ。選挙カーからの名前の連呼や街頭演説で毎日がにぎやかである。そして選挙の時期だけの風物詩といえるのが、候補者の選挙ポスター。実はこれで小学生の息子とおおいに盛り上がるのである。
昔のポスターは割とまじめな表情や、笑顔でも控えめなものが多かったように思うが、最近はけっこう個性的。今も、何を意味しているのかよく分からないが、近所のおばさんが「アッ」と驚いて手の平を広げたような格好の女性候補者や、「住民の声を聞くぞ」とでもいうように両耳に手を当てた候補者などユニークで、息子と2人でマネをしたり(不謹慎だけど)、当の人物の選挙カーの声が聞こえると、「あっ、○○さん来た〜」などと喜んだりするのだ。
若者の選挙離れが言われて久しいから、自分の息子にはそうなって欲しくない、そんなエラそうな気持ちではないけれど、息子がもっと小さい頃から、投票する時はできる限り連れていったし、選挙ポスターが掲げられるとその意味を説明したりもした。そのせいか、自然と選挙というものに関心を持ち、この間も「僕も早く投票したい」と言っていた。選挙は小難しいものではなく、私と息子の間では一種のイベントなのである。
選挙カーが通りかかった時に2歳の次男が支援者のマネをして手を振ると、「小さなご支援ありがとうございます」とスピーカーで応えてくれた事、候補者の支援に来ていた高市早苗大臣に、「かわいいね〜」と次男が肩を触られた事、それらもうれしい出来事として、しばらくの間わが家の話題となった。
できるのなら今年は開票所に連れて行き、あの独特の雰囲気を一緒に体感しようと、親子で楽しみにしている。


藤原 佳枝

『都知事選間近』

いよいよ都知事選が近づいてきた。首長選挙の中でも、国政選挙並に注目の的になるところだ。今までは傍観者でよかったが、気がつけば都民になっている私。否応なしに選挙のことを考えさせられる。
最近の知事選では、全く政党の支援を受けていない候補者が勝利を収めたりすることも珍しくない。本来政党政治であるのだから、候補者が何党かというのは大きな意味を持つはずだが、投票者はそれを重視していない。いかに、政治のプロである政治家が今や信頼を得ていないかがわかる。
「自民党をぶっこわす」と言った、自民党の小泉首相が人気を集めたように、旧来のしがらみに嫌気がさしているのだろう。豊かな時代ともいえるが、一方では将来への不安や不満が広がりつつあるのが現状である。そこに政党は対応しているとは言い難い。
新しいものが登場してほしい。癒着がなく、少々の失敗はあっても、将来性を感じさせるような人。市民と政治家の間の壁が取り去られ、双方向のコミュニケーションが図れるような政治の場。地方でそんな小さな芽が育っているようにも感じられる。一方、大都会東京の知事選の候補者を見ると、何となくお寒い状態だ。古いものから新しいものへの交代は思った以上に難しいのかもしれない。


森 たかこ

『誰に1票投じるかを人に言いますか?』

数年前、選挙前に行ったアルバイトで驚いたことがある。それは自分の支持政党及び誰に1票を投じるかを、いきなりかかってきた電話にもすらすら答える人がいるということだった。
アルバイトの内容は、市会議員か何かの選挙だったと思うのであるが、名簿に載っている家庭に電話をかけ、支持政党と今回誰に1票を投じる予定かを聞くというものである。それを地区毎に表にまとめるというものだが、随分昔だったので詳細は覚えていない。
この仕事の説明を聞いたとき、「こんな仕事があるんだ」とびっくりしたことと「こんな電話がかかってきたら絶対嫌だろうなあ」と気が重くなったことを覚えている。
ところが電話をかけてみると、迷惑そうな声や不審がる人がいる反面、意外にも丁寧に答えてくれる人や、すらすら答えてくれる人がいるのに驚いた。
私だったらそんな電話には絶対に答えないと思うのだが、昔だったからのんびりしていたのかもしれない。

たった1回きりのアルバイトだったが、選挙前に時々思い出す。
今日もどこかでこうして電話調査が行われ、その電話に対して「あなた誰?」とも聞かずに、すらすら答える人がいるんだろうなあと。


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