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  2009年秋号のお題 『政権交代』
                            
2009年8月29日、ついに自民党から民主党への政権交代が実現しました。
あれから1ヵ月余。変わりつつある政治と、それに呼応して変わっていくはずの社会を、メンバーはどう捉えているのでしょうか。


森 たかこ

『政権交代が吉と出るか凶と出るか』

自民党から民主党に政権交代して約一ヶ月。
政府は子ども手当や借金の返済猶予など次々と政策を進めつつある。
自民党政権のときは絶対に無理と思われたことが、これを機会に一気に出来そうな気もするけれども、それが吉と出るか凶と出るかはやってみないと分からない。
選挙前の公約では新たな政策の財源がきちんと示されていなかったので、これから増税やら何らかの負担がどんどん出てきそうで怖いというのもある。
興味深いのは、ダム事業についてだ。
私が中学生の頃、米国のルーズベルト大統領が世界恐慌を克服させるためのニューディール政策の一部に大量のダムを建設して雇用を作ったとあった。今回は大量のダム事業の凍結で税金の無駄遣いを防止するという。
個々にはいろいろ事情があるだろうけど、ダムの建設一つをとってみても、考え方が違うと正反対のものになってしまう。
一つの政策について、起こりうる影響を全部考えようとすると、頭がパニックになってしまうし、現実には予測不可能だから、政治家はたぶんおおざっぱで楽天家なんだろう。
ただ鳩山由紀夫氏も最近続いた首相と同じようにセレブなお坊ちゃま。
いざとなったら「やーめた!」と逃げ出しても生活に全く困らない。何があっても、それだけはやめてくださいね。


藤原 佳枝

『長い目での政権交代』

民主党が圧勝し、鳩山政権が誕生してからほぼ1ヵ月。かつての政権政党・自民党はニュースの扱いも少なくなり、見る影もない。栄華を誇った自民党のベテラン議員にすれば、現状は歯がゆく、ほぞをかむ思いをしていることだろう。
小選挙区制度が導入されて、10年余り。当時、政権交代可能な二大政党政治を目指していたのが小沢一郎氏だったが、まさにこの制度により、ドラスチックな政権交代が可能であることが見せつけられた。死票が多いとはいえ、一党が政権を取り続けるデメリットに比べれば、この制度案外といいのではないかと思う。
民主党政権の登場により、新しい政策が打ち出されてきている。『高速道路無料化』、『子供手当』、『扶養者控除の廃止』といった庶民に直結した話しから、『羽田空港ハブ化』、『ダム凍結』など都市・国レベルの話しに至るまで。個人的には反対の政策も出ているが、今までなかった変化も感じる。とりあえずは、少し長い気持ちでこの政権交代の成果を見守りたい。そして、野党となった自民党と政策論争をして、緊張感のある国会を運営してもらいたい。政権交代をすれば、政治はこう変わるというのを実感したい。


宇都宮 雅子

『世紀の交代に水を差さないで』

政権交代により政策が官僚主導から政治家主導へ変わった。官僚のつくった政策に閣議でハンコを押すだけだった政治家が、自分たちのアタマで政策を考えはじめたらしい。明治維新以来140年余、官僚頼みだった政府がガラリと方向転換したわけで、この変化は大きい。
「もう官僚はダメだ…」と私たち庶民が本当に認識しはじめたのは、やはり年金問題あたりからではないだろうか。小学生でもダメだとわかる方法を何十年と続けた挙句、「わかりません」で済ませようとした、あの姿勢。ほかにも「予算があるから使い切らねば」と造り続けたムダな施設は、赤字続きで地域のお荷物化。民間だったらとっくにリストラ・とっくに倒産の状況を「税金があるから」と、のほほんとしてきたツケが今、日本中に蔓延する財政難だ。
民主党に代わったからといって、問題が次々と解決するなんて庶民も思っていない。高速道路無料化も子ども手当も、ツッコミどころはいろいろある。でも、あのまま自民党=官僚主導の政治を続けられるよりはマシ! そう思う人が多かったから、ああも見事に政権がひっくり返ったのではないだろうか。そして、せっかくひっくり返したのだから、長い目で民主党政権を見守ろう…というのが、現在の民意ではないだろうか。
願わくば、メディアに揚げ足取りの記事を控えていただきたい。叩いてホコリの出ない人間なんていない。それはメディアの中でも同じはず。1度動きはじめた流れを、つまらないことで止めてはいけないと思う。もっと若者が未来に希望を持てる社会、高齢者が安心して年を取れる社会にするためにも。