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       2011年夏号のお題 『節電』

2011年3月11日を契機に、世の中が変わった…そう感じておられる方も多いのでは?
「節電」も3.11をきっかけに生まれた世の潮流のひとつ。
今回は、メンバーひとりひとりの「節電事情」をご紹介します。


藤原 佳枝

『節電の日々』

天気予報ならぬ電気予報を毎日何回かネット確認する。80%以下だと安心するし、90%を超えていると少々緊張する。温度は28℃設定が合言葉のようになっている。世界一の電力安定を誇った日本がまさかこのようになるなんて、昨年の今頃は思いもしなかった。

その予想外の事態をもたらしたのが原発事故である。まだ収束していない。正確な情報が出ているのかもわからない。我々はなんと脆弱なものを頼りにしていたのだろうか。絶対安全だと言われていたが、それが間違っていたことは自明である。電力会社は原発がなければ、安定な電力の供給ができないという。

さて、果たしてそうなのか。現実に、駅やコンビニの照明は落とされ、電車内の温度も上げられている。でも、それって案外悪くないのである。夜そんなに明るくする必要はなかったし、そんなに冷房をきかせる必要もなかったのだ。ついつい便利な方向に流れすぎていただけだったと思う。

夜は暗いし、夏は暑い。そんな当たり前を前提として、ちょっとした節電に気をつけていけばいいのだと思う。一人ひとりの少しの心がけが、大きな効果を生むはずだ。これからの猛暑が怖い気もするが、きっと電力は足り停電はないと予想する。


宇都宮 雅子

『今が時代の転換点?』

2011年夏、「節電」が国民的テーマだ。
私の場合、東京のマンションの電気代は月平均3200円。世間一般から見て、かなり少ないほうだと思う。普段から冷房の設定温度は30℃、暖房は20℃。冷蔵庫の温度設定は年間を通して「弱」にし、2日以上家を空けるときは、冷蔵庫とFAX以外の家電製品のコンセントを抜いて外出する。エアコンを使うのはギリギリまでガマンしているし、これ以上どこを節電すればいいのか、頭を悩ませている。
家庭の節電状況はその家によりさまざまだが、民間企業はどこでも経費削減のため、普段から節電している。それに輪をかけての「節電命令」。会社全体で照明をLEDに交換するとか、必要機材を省エネタイプに替えるなどすれば節電になるのだろうが、かなりイニシャルコストがかかる。震災後の景気の冷え込みに必死で耐えている企業には、その余裕がないところが多い。
しかしその一方で、「こんなに明るくしなくていいのに」「こんなに冷房しなくてもいいのに」と思う場所が、節電で改善された例もある。以前は電車内の冷房のキツさによく震えあがっていたが、今はそうでもない。コンビニもスーパーも、前は冷房が効きすぎて長時間いられなかったが、今はちょうどいい。関東地方の駅はどこも節電で暗いが、さほど不自由はない。私の住むマンションも共用のエントランス部分の照明を3分の1に減らしたが、なんの不便もない。
原発の是非は別論議として、エネルギーは無限ではない。「節電」は電力をジャブジャブ使っていた私たちの暮らし方や概念を変えてくれた。これも次世代エネルギーの時代へと向かうステップではないか。そう前向きに考えて、暑い夏を乗り切りたいものだ。


森 たかこ

『もっと早く節電していれば』

3月11日の東北の震災以来、連日節電が大きく取り上げられている。電気を消費する大きなものはエアコンだそうだ。それでエアコンの設定温度を例年よりも高い28度にしようとテレビでも呼びかけている。
今私が仕事に通っている事務所は、設定温度が26度。これでも少し前まで24度の設定だったからそれより2度上がっている。節電を大きな声で言ってもらわなければこの温度設定にはならなかっただろう。
私は、ひどい寒がりなので、夏でも冷房の効いているところでは長袖の服を手放せず、外気と室内との温度差に毎年泣かされてきた。だけど今年は節電の影響で冷えすぎの場所はほとんどなく、からだはとても楽。
夏は暑いのが当たり前。冬は寒いのが当たり前。それを電気(ガスもあるけど)の力で少し過ごしやすく手助けしてもらうぐらいにエアコンを使うのがいいのではと思っていたけれど、それがこんな形で実現するとは。
地震・津波・原発事故が起こる前に、みんなが今と同じくらい節電していたなら「原発は今より少なくて済んだかもしれないなあ」、「福島に原発はなかったかもしれないなあ」と思うと悔しくて仕方がない。
今頃思ってもどうにもできないかもしれないが、これからも私は節電を続けていく。私ができることは電化製品の使用時間を減らしたりコンセントを抜いたりと小さなことしかできないけれどもね。
そして、太陽光発電や風力発電など自然エネルギーを電気に変える技術や研究を応援したいと心から思っている。