元に戻る

 2011年秋号のお題 『台風』

今年も台風シーズンは過ぎましたが、振り返れば大きな被害を受けました。天気予報で台風が発生したと聞くと、進路が気になります。
台風は日本につきものですが、PIAZZAのメンバーは台風をどのようにイメージしているのでしょうか。


宇都宮 雅子

『ノスタルジック台風』

台風の多い西日本で生まれ育ったので、「台風が来る」と聞くと、なんだかなつかしい気分になる。
子どもの頃、一度台風で停電したことがあった。真っ暗ななか、ろうそくをつけて家族で夕食を食べるとき、非日常の風景にワクワクした。テレビもあかりもつかないので早く寝るしかないのだが、雨風がやんだ頃を見計らってベランダから台風の目のある方向を眺めた。「あのあたりじゃないか」と父が指差した空の方向が、夜なのに妙に明るかったのを覚えている。当時、私は「台風の目」というのは人間の目を大きくしたものだと思いこんでいたから、「目なんてないじゃないか」と不思議だった。
しかし、こんなお気楽な思い出も都会に住んでいたからこそ。川の増水や裏山の土砂崩れの恐れがある地域では、神経を尖らして台風に準備しておられるはず。今夏の台風被害も山間部では悲惨なものだった。
地震と違って、台風はかなり正確に予測ができる。十全な備えをして、避難が必要な地域は早めに避難する。それ以外の地域では台風の前後はあまり動きまわらず、家の中にじっとしていたほうがよさそうだ。


藤原 佳枝

『脅威と恩恵』

先日の台風15号は、首都圏も大きな影響を受けた。西日本と比べて、台風の直撃を受けることが少ないので、首都圏の人々は戦々恐々という感じであった。自分は数年前に、西日本から東京へ引っ越しているので、過去台風には多少慣れているつもりだ。小中学生の頃には、実家が床下浸水したこともあった。当時、警報が出て学校が休みになるのを、子供心に少し楽しみにしていたものだった。被害を受けた方々のことを考えれば、今となっては不謹慎なことだが、暴風雨を純粋に怖いだけではなく、少しの好奇心を持って迎えたような気がする。

日本は気象的に台風の上陸を受けやすく、被害も受けることになる。過去の伊勢湾台風の甚大な被害を始め、いくつも多大な損失を被っている。ただし、地震と同様に自然災害とはいえ、台風の場合は備える時間がある。気象情報の向上により、かなり細かく正確な予測ができ、そのために対策を取ることができる。自然の脅威に対して抵抗することは限られているが、安全な場所にいて待つということはできる。被害に目が向きがちだが、台風は大量の雨をもたらしてくれる。これがなければおそらく水不足はひどいだろう。渇水ダムを潤してくれるのだ。そして、作物に対して被害も与えるが、間違いなく恵みの雨である。日本の豊かな作物は、台風の雨がなかったら難しいかもしれない。自然の脅威と恩恵を改めて感じる。


森 たかこ

『船と台風』

台風といえば思い出すのは、若き日の船旅。
遠い昔、私は学校の海洋実習で沖縄へ船で行った。海洋実習なので水温の調査など作業が多少あったが、沖縄本島や西表島などいろいろな島にゆったり行くことができてそれなりに面白かった。行きは海も比較的穏やかで食べたり飲んだり遊んだりしながら目的地に着いたのだけれど、帰りは台風と一緒になってしまった。
ニュースで台風の進路がよく放送されているが、沖縄から大阪に帰ってくる船の進路も台風とほぼ同じコース。
台風の勢力がもう少し大きかったら、出航できなかったらしいが私たちの乗った船は、幸か不幸か予定通り大阪に向けて出航し、台風と一緒に帰ってきた。
半端なく揺れた。「沈まないから大丈夫」って聞いていたけど怖かった。ほとんど乗客は船酔いでぐったりして横になっているが横になっても体が少し転がったりするほど。廊下もまっすぐに歩けないし、非日常の世界を経験した。
後から思い出すとそれはそれでまた懐かしくて楽しい思い出なんだけど、船に乗っている間のほとんどがずっと台風と一緒って、本当にしんどかった。
その時以外は、台風はほとんど自宅で迎えているが、家での台風は船上に比べると本当に楽。沈むのではないかという心配がない。これは大きい。(家にいても大きな被害に遭われた方がいらっしゃるので一概には言い切れませんが)
これからも生きている限り何度も台風が来るだろう。だけど地上の家(今はマンション住まい)で台風を迎えるのは安心だといつも思う。