元に戻る

   2013年夏号のお題 『超高層ビル』


どの程度の高さ以上の建築物を超高層ビルと呼ぶかについては明確な基準はないそうだけど、60m以上の建築物から建築基準法や国土交通省の認可、航空法、消防法などで制限が異なることから60m超の建築物を超高層ビルと呼ぶケースが多いらしい。
各地に次々に超高層ビルが建設されているが、PIAZZAのメンバーは超高層ビルというと、何を思いうかぶのだろうか?


森 たかこ

『地上300メートルの阿倍野ハルカス』

私は大阪市に住んでいる。今、阿倍野区に地上300mの超高層ビル・ハルカスが建設中だ。2012年8月にはもう300mには到達した。
先日(2013年6月13日)、一部がオープンしたので、早速行ってみた。
人が多すぎて、結局ほとんど回らず帰ってきたのだけれど、中に入ってみるより外から眺めている方が楽しかったような気がする。
上層階や展望台にも行っていないので、すばらしさがよくわかってないのだけど、外が見えないところはただのきれいなビル。
だけど、300mって下から見るとすごく高い。
地震や火事などのリスクやテナントが入るかどうかのリスクもあるのにこんな高いビルを造るなんて近鉄さんは勇気がある。ま、被害を極力少なくするように設計してあるらしいけど、その技術と勇気はすごいです。でももっとすごいのは、本当にそれを作っている人だと思う。ハルカスのそばのビルから作業員の人たちが働いているのを見て感動してしまった。怖すぎる。
東京スカイツリーは634mだったっけ。超高層ビルを実際に形のあるモノにしてくれる彼らには本当に感謝です。
ただ、ハルカスには近鉄百貨店が入っているのだけど、子供の頃から近鉄百貨店に親しんできた者からすると、ちょっと田舎くさいけど親切で仲の良かった女の子が、急にきれいになって注目を浴び離れていったような寂しさを感じてしまう。
こんなに高くてきれいにならなくてもいいんだけどなあ。


宇都宮 雅子

『なぜ高い場所は人を高揚させるのか』

人は高い場所からの眺めが好きだ。はるか遠くまで見渡せ、地相から人の動きまでよく見え、なんだか目の前の世界を掌握したような気分になれる。当然日あたりがいいし、風もよく通って気持ちいい。西洋に大聖堂があり、日本に天守閣があるのもそのためかと思ってしまう。

しかし、高い場所というのは物理的な面で、人が住むにはいろいろ支障がある。まず、エレベーターがないととても住めない。地震でエレベーターが止まったときは悲惨だ。万一モノを落としたときの危険度もハンパない。小さなものでも高い場所から落としたら、とんでもない凶器になったりする。そして地震が起きたら……? 間違いなく地上より揺れる。超高層ビルは耐震性に注意が払われているので、まさか倒壊することはないだろうが、揺れるのは覚悟しておかないといけない。

最近では東京の超高層ビル群が都心の気候を変えたという話も聞く。東京の超高層ビルは地価が高いので上に延びるしかなかった結果だろうが、あのビル群の風景に高揚感を感じてしまうのはなぜだろう。先進性の象徴だから? 豊かな社会を連想させるから? ひょっとして、人間のDNAに高いものへのあこがれが刷り込まれている? 今はわからないが、人類の歴史がその答えを持っているような気がする。


藤原 佳枝

『超高層ビルと夢』

昭和に地方に育った私にとって、高い建物といってもせいぜい10階ぐらい。その程度の建物でも、地に足がつかない感があり、あまり好きではなかった。
超高層ビルは地震大国日本にはあまりなじまないとも思えるが、一方高い建築技術のせいか地震で崩壊したとは聞かない。
都市集中化は進む一方であるから、これからもますますビル群は増えてくるのだろう。

タワーマンション暮らしなどまっぴらだと思うぐらい高さには魅力を感じない私だが、その高さ故に本能的に惹きつけられた場所がある。
ニューヨーク、マンハッタン。30代で目にしたそのビル群は、圧倒的な存在感を示してくれた。繁栄とエネルギーを見せつけられた。
この街で成功したいと、若者に夢を見せるところ。マンハッタンはとても魅力的だった。

今、東京スカイツリーは人気スポットである。青空に浮かぶツリーはとても美しい。春などは近くの桜並木が映えて絵になる。
高層ビル単体ではなく、その周辺も含めて、「らしさ」を感じさせる特徴的なビル群ができればいいな、と思う。
地元の人が愛着を感じることができ、若者が夢を見ることができる。そんな超高層ビルが日本に育つのを期待したい。