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今月のお題 「帽子」  

帽子と聞いて、パッと思い浮かぶ帽子は人によりさまざま。おしゃれな帽子を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。しかし広辞苑で調べてみると、帽子とは、「頭にかぶって寒暑または塵埃(じんあい)を防ぎ礼節を整えるもの」だそうです。さてメンバーはどんな「頭にかぶるもの」を思い浮かべたのでしょうか。


宇都宮 雅子

『旅先での忘れ物』

私にとって帽子とは、「旅先での忘れ物」堂々の第1位である。
南のリゾート地への旅行に帽子は必携。若い頃ならいざ知らず、日焼けが大敵の今は、旅先に帽子を忘れたときは口紅を忘れたぐらいのショックを受ける。しかし何度旅行しても、コレを忘れてしまいがちだ。
ランカウイ島に旅行したとき、日本から持参した帽子をどこかに置き忘れ、免税店でナイキのキャップを買った。ところが、翌年サイパンに旅行したとき、釣り舟にその帽子を忘れてしまった。さらにその翌年、タイに行くことになり、デパートでツバ広の帽子を買った。雨季のタイでは帽子を使う機会が少なく、私はなくさずにすんだが、同行の友人は見事になくした。しかし、その後中国の大連へ旅行したとき、私は帽子を持って行くことすら忘れた。9月の大連は陽射しがキツく、帽子の必要性をつくづく感じたし、実際帽子を売る屋台もいっぱい見かけた。買おうか買うまいか相当悩んだが、結局買わずに帰国。持っていくはずだった帽子はマガジンラックの上にちょこんと乗ったまま、私を出迎えてくれた。
なくてもどうにでもなるが、忘れると悔しい。やはり帽子は口紅に似ている。


伊藤 さおり

『彼女の手づくり帽子』

 自分だけの帽子を作ってくれる人がいる。彼女は自宅の一部屋を工房にしている帽子作家だが、売るための作品づくりというよりも、自分が被りたい帽子を作るというスタイルで、古い着物地や蚊帳地を使うなどその作風はシンプルな中にも味わい深いものがある。
そんな彼女に聞いた話。ある日のこと、「この着物で帽子を作ってほしい」と訪ねて来た男性がいた。その着物は彼の亡くなった妻が愛用していた大島紬であり、彼はその時、同じ着物で仕立てたジャケットを身につけていたという。思い出の品が形を変え、大切に手元に置かれる、そんな一つの愛情の形に彼女はとても感銘を受けたという。
考えてみれば、リサイクルなどという言葉を使うよりずっと以前から、人々は布をつづくり、時には刺し子で美しい文様を施しならが雑巾になるまで使い切っていた。今の時代に同じことは到底無理であるが、作り手の顔が見えるモノというのはそれだけで美しく、温かである。彼女が作る帽子も、きっと大切に使われ続けられるのだろう。そして私が頂いた、この帽子も…。 


福留 順子

『帽子』

帽子は結構重宝している。ついこの間まで、寒い日には毛糸の帽子を愛用していた。頭と手足を覆うことで、保温はかなり効率でカバーされる。寒い日の道中、息子に帽子を取られた時には、真剣に腹が立ったものだ。
ポカポカ陽気の今ごろになると、春風に髪をなびかせるというのは、気持ちの良いことだ。でも、もう紫外線の攻撃は始まっている。髪をなびかせるのなんて、とんでもない!しっかり、帽子は必要。と、こう反応を示すのは、オバサンだからだろうか?
帽子をかぶるというのは、防寒や日よけはもとより、ぼさぼさ頭も隠してくれるので、嬉しい。髪の毛を乾かしきらずに寝てしまった翌朝、帽子をかぶると、気にならなくなる。ただし、出先で帽子を取らなければならなくたった時は、真っ青になったこともある。無精は、いけません。
かくして帽子はちょっとコレクション状態。その中に「強風が吹いても飛びません」といううたい文句にひかれて買った帽子がある。身に付けるものはどちらかというと少し大きめ、が好きな私。その帽子も少し大き目を買った。これがいけなかった。その帽子は頭にフィットさせて、帽子本体とつばとの間に隙間を作ることで風を逃がす構造になっていた。ちょっと大きめ、つまりフィットしない帽子は、いくら風の抜け道がつけられていても、風が吹けば帽子は飛ばされてしまう。しかし、かぶってしっかり止まるような帽子なら、別に風の抜け道を作っていなくても、飛ばないのではないか?と思ってしまう。
「うたい文句を信じたら、失敗する」という教訓を、その帽子を見る度に自然に唱えてしまうのが、悲しい。


森 たかこ

『子どもと帽子』

帽子というとすぐ思い浮かべるのが、小さな子どもが帽子をかぶった姿である。
私の勝手な思いこみかもしれないが、子どもが帽子をかぶっている姿は、かぶっていないときの2倍から3倍はかわいく見える。特にかわいい顔というのでなくても、幼稚園児が帽子をかぶって集団で歩いている場合など、どうしてみんなこんなにかわいい顔をしているのだろうと驚くほどである。
しかしそんなかわいい帽子姿も小学生になると一変する。赤白帽の着用である。赤白帽とは表と裏が赤と白になっている野球帽のような帽子である。ほとんどの赤白帽はつばの部分がよれよれで、あの帽子をかぶるとどんなにかわいい子でも、もう一つ……の顔になり、かわいらしさが半減する。
子どもが入学して少ししか経たないうちは、学校はどうしてこんな格好をさせるのだろうかと悲しくなった。
が、これは主に子どもの安全のためなのだそうだ。なるほど、学校外で赤(白)い帽子は非常によく目立つ。親としてはいくら不細工に見えても安全に帰ってきてくれる方がいい。
しかし、子どもが小さくてかわいい間は短い。もう少しかっこよくみえて、よく目立ち、なおカバンに入れても型くずれしないような子供用の帽子を、誰か考えてくれないだろうか……。