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今月のお題 「収納」    

収納が上手な人、下手な人との違いは何なのだろう。
やっぱり性格? 
でも、どちらにしろスッキリ片付いた空間は気持ちがいいものだし、それが家の場合だと面倒な掃除もずいぶんと楽チンになる。
特に女性にとっては永遠のテーマには違いない。ちまたの女性誌でも、ネタがなくなると「収納特集」をするとかしないとか…。
そんなわけで、今回は多いに参考にしたい(したくない?)話が満載です!


伊藤 さおり

『収納下手を直す方法』

はっきり言って収納下手である。思えば、小学生の頃から「絵の具がない、プリントがない」と騒いでは、母親に「ちゃんと探しなさい!」と怒られたものだ。でもどこを探しても無くて、諦めたところに再度母親が登場。何度も見たはずの所から手品のように探し物を取り出してくれるのだった。
そんな私も今では立派な(!?)主婦のひとり。ときには「探し物はどこですか〜?」現象が起こることもあるけれど、それが大金であるわけもなく、「買っておいた海苔がない〜」や「後で着けようと思っていたボタンが消えた〜」くらいのカワイイものである。
ところが、私のお気に入りの小物たちにはそういった不遇がやって来ない。つまり、彼らには彼らだけに許された安住の場所が与えられているのだ。そこは小さなタンスの小さな引出し。古い布や手ぬぐいといった類が収められている。かの向田邦子が全国の旨いものの資料やらを仕舞っておいたという"う"の引出しではないが、いつか使うその日まで大切にとっておく。だから無くしたり探したりする必要はないのだ。
思えば、決められた場所が与えられるか与えられないか、つまりきちんと収納できるかできないかは、そのモノへの愛情の深さによるのではないだろうか。少なくとも私に関してはそう言える。であるなら、わが家へ招き入れたモノたち一つひとつを愛着をもって可愛がってやれば、彼らにも然るべき定位置が与えられ、私は"収納上手"となるかもしれない! 


森 たかこ

『整理収納ができる人、できない人』

収納というと、だいたいが整理とセットになって考えられることが多い。
この世には、整理収納ができる人とできない人がはっきり別れているような気がする。それはたとえば、歌が歌える人と歌えない人がいるように。
歌が歌える人は、なぜ歌が歌えないのかわからない。歌えない理由は、声が悪いとか音痴とか、恥ずかしがり屋だとかいろいろ原因はあるだろうが、それでもある程度努力すれば歌えるようになるはずだからだ。しかし歌えない人は、歌えないままでほとんど一生を終える。歌えるようになれば、楽しいだろうと思いながら……。それと非常に似ている。
私は整理整頓収納が本当に下手だ。できないのである。別に正当化しているわけではないのだが、他にも同じような人がいるのではないかと思って書いた。でも心の中には、物がきちんと整理収納されたスッキリした家にすみたいという思いは常にある。それで、整理収納に関する本はよく読む。もう何冊読んだことやら。で、最近も一冊読んで、なるほどと思い、整理ダンスを整理した。まずは不要な物を処分しなければならない。しかしほとんど捨てられない。思い切って処分すると心が痛む。結局二段整理したところで心身共に疲れ、力つきてしまった。
結局、我が家はいつまでたっても荒れたままなのである。


宇都宮 雅子

『収納スペースは語る』

テレビをつけても雑誌を開いても「収納」が大流行である。
しかし、本当に美しく収納したいのなら、テレビや雑誌で収納名人のワザを盗むまでもない。モノを捨てればいいのだ。ヘルパーとして訪問した家で、モノに埋もれて暮らしている高齢者を山ほど目撃したが、本人はなかなか捨てられないモノも、他人にとってはガラクタ同然。だから他人にモノを見て判断してもらい、捨ててもらうのがいちばん合理的だ。かく云う私も捨てられない派のひとりだが、他人のモノならホイホイ捨てられる。ヘルパー先でもたまに「お願いですから捨てさせてください!」と叫びたくなる瞬間があるほどだ。そのモノに込められた思い出を知らないだけで。
収納スペースを見ると、その人の人生がわかる。なににこだわり、なにに興味があり、なにを大切にしてきたのか。私もきっと思い出いっぱいのモノに囲まれて、訪問してきたヘルパーを手こずらせる高齢者になることだろう。


福留 順子

『物は増やすまい、と決意するのだけれど…』

結婚して2度引越しをした。新婚のスタートを切った部屋は、一人暮らしなら余裕のスペース、二人暮らしならちょっと…という大きさだった。子どもが生まれ、物が増え、収めるスペースもなくなり、ちょっと限界がきて引越しとなった。引越しの整理をしていて、でるわでるわの不要品。処分に次ぐ処分を決行した。そしてあたりを見回したときの感想は、これならまだここでも十分生活できたのに、だった。
広いスペースに、少しの物。狭いスペースにごたごた暮らしてきた身には、少々寒かった。でも、この空間がいいのよねえ、といっている間に、住人が増え、物も増えること増えること!あっという間に、足の踏み場もない状態になった。
そして再度引越しとなった。1度目の時は鼻歌交じりに引越しの準備ができたのに、今度は箱に詰めてもつめても、物が湧いてくる。この収納棚によくぞこれだけ詰めたもの!と自分で感心することも。中には、引っ越してきて一度も紐を解かないままのものもあった。今度の実感も、不要なものは処分する、溜め込まない、そうするとスペースは有効に使える、だった。人間のからだと一緒。不必要な脂肪分を溜め込むと、身体に悪い。
収納スペースは広ければ広いほどいいというのではなく、何をどのように収納するかが問題なのだろう。これは、生き方とも関係してくる問題でもある。収納状況のチェックと不要品の処分、ものを買うときは必要かどうかを一呼吸おいて決める。と頭で分っていても、日常に押し流され、自分を甘やかし、日々は過ぎていく。